千葉県浦安市舞浜に「冒険とイマジネーションの海へ」をテーマにした東京ディズニーシー（ＴＤＳ）が開園して１０周年を迎えた。世界各国にあるディズニーのテーマパークの中で、海を主役にした施設はここだけだ。今年は東日本大震災で長期休園の事態に見舞われたが、新アトラクションも加わり、ようやく活気を取り戻した。担当者に開園当時などを振り返ってもらった。（江田隆一）
始まりは昭和６３年
東京ディズニーランド（ＴＤＬ）に続く第２のパークを作る－。ＴＤＬの運営会社、オリエンタルランドが新パーク構想を明らかにしたのは昭和６３年。ＴＤＬ開園から１８年目の平成１３年９月４日、ＴＤＳはオープンした。
「プロジェクトチームに加わったのはオープンの約４年前。新パーク建設は夢だったので、メンバーに選ばれてうれしかった」
現在、運営部マネジャーの田村圭司さん（４４）は振り返る。デザイナーの提案を安全面や使い勝手から検討してアトラクションの仕様を決め、完成させるのが役目だった。
当時、地球の内部を猛スピードで走行するアトラクション「センター・オブ・ジ・アース」の設計に当たり、田村さんは避難通路の手すり設置で頭を悩ませていた。雰囲気を壊さないようにするにはどうしたらよいか。苦心の末、溶けた溶岩に見える形状を提案し、採用された。
「デザイナーは自信作を持ち込んでくる。例えば『こんな形のイスにしたい』と主張しても、座りにくければだめ。こだわりを生かしつつ修正を重ね、最終決定するまでが大変だった」と語る。
飲酒もでき、大人やカップルが遊べるＴＤＳ。「ＴＤＬはファンタジーの世界で、こちらはロマンチックな世界」（田村さん）というように、ファミリー層に魅力を知ってもらうには時間がかかった。家族向けアトラクションを充実させ、ようやく浸透させた。
キャストから学ぶ
今年３月１１日、ＴＤＳを激しい揺れが襲った。田村さんは、パーク全体の運営責任の当番日で事務室に詰めていた。アトラクション施設内の来場者を屋外に出し、手際よく安全な建物へ移動させた。帰宅できない来場者に安心してもらおうと、キャスト（従業員）が保存食の五目ご飯や、売店にあった飲料や菓子を提供するなど、笑顔でもてなした。
問題は再開スケジュールだった。施設に目立った損傷はなかったが、電力事情などから再開日は決まらない。田村さんの不安を落ち着かせたのは、浦安市で液状化被害の復旧ボランティアに汗を流す両パークのキャストの姿だった。田村さんは日本人の豊かな心と、仲間たちのすばらしさを改めて知ったという。
ＴＤＳ再開は４月２８日。ナイトエンターテインメント「ファンタズミック！」もスタートし、日本の復興を夜空に誓った。
両テーマパークを運営するオリエンタルランドは４～６月期連結決算で最終損益３８億円の赤字となったが、夏休み期間の子供入場料半額など積極策が奏功、８月の入園者は過去最高を記録した。
１０年前のＴＤＳ開園日は雨模様だったが、オープニングセレモニーの間は晴れ間が広がった。１０周年記念式典の９月４日も心配された雨はなく、記念イベント「Ｂｅ Ｍａｇｉｃａｌ（ビー マジカル）！」がスタートした。
１０年前は見ることができなかった記念セレモニーを目に焼き付けたという田村さんは「ＴＤＳは進化し続け、１０年たった今も発展中です。若い人に負けないアイデアを出し続けたい」と話した。
東京ディズニーシーのおもしろデータ
★４１７万キロ 「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー：クリスタルスカルの魔宮」でオフロード車が１０年間に走った総走行距離。地球を１０４周した距離に相当する。
★１５８６万個 人気テイクアウトメニュー「ギョウザドッグ」の１０年間の販売総数。１個（長さ２０センチ）ずつ並べれば３１７２キロとなり、北海道から沖縄まで日本列島を縦断する。
★３４ アトラクション数。オープン当初は２６施設だった。オープンした４つの大型アトラクションの投資額は計３００億円を超す。
東京ディズニーシー（ＴＤＳ）の歩み
昭和５８年４月 東京ディズニーランド開園
６３年４月 第２パーク構想発表
平成９年１１月 第２パーク名称は東京ディズニーシーと発表
１０年１０月 着工
１３年７月 周回モノレール・ディズニーリゾートライン開業
８月 ＴＤＳ完成
９月 ＴＤＳ開園
１４年７月 入園者数１０００万人達成
１７年７月 新アトラクション「レイジングスピリッツ」開始
１８年９月 新アトラクション「タワー・オブ・テラー」開始
２１年１０月 新アトラクション「タートル・トーク」開始
２３年７月 新アトラクション「ジャスミンのフライングカー
ペット」開始
９月 ＴＤＳ１０周年記念イベントスタート
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