2012年4月8日日曜日

橋下方針「不採用」?大阪市の時空館、閉館も建物撤去せず


大阪市の橋下徹市長が不採算施設として建物の撤去も含めた廃止の検討を指示した大阪南港地区の市立海洋博物館「なにわの海の時空館」(住之江区)について、市が、来年3月にも閉館とする一方、建物は撤去せず新たな集客施設として民間事業者を募る方向性をまとめたことが7日、分かった。撤去に巨額の費用がかかるためで、市は「地域のにぎわい作りに生かしたい」としているが、集客性の低かった施設の後に参入希望があるのかどうかは不透明だ。
 同館は、港湾とともに発展した大阪の歴史を学べる施設として、総工費約176億円をかけて平成12年7月に開館。江戸時代に上方と江戸を結んだ貨物船、菱垣廻船(ひがきかいせん)「浪華丸」(全長約30メートル・帆柱約27・5メートル)の実物大復元船など約千点の資料を展示している。
 フランス人建築家がデザインした建物には、約4200枚のガラス板が使われ、海面に浮かぶようなドーム形で、英国構造技術者協会の特別賞も受賞した。
 開館当初は年約20万人の入館者があったが、年々減少し、平成22年度は9万5千人にとどまった。市の指定管理者が運営しており、運営費は委託料を含めて年約1億9千万円かかるが、入館料収入は2500万円しかなく、市の企業会計から赤字補填(ほてん)を続けてきた。
 橋下市長は、収益でランニングコストを出せない状況を問題視し、就任直後の昨年末の市戦略会議で、施設の撤去を含めた廃止の検討を指示。市港湾局で協議を進めてきた。
港湾局は、このまま事業を継続しても好転は見込めず、収益改善の道筋がつかないことから、閉館方針を決定。ただ、施設撤去については少なくとも8億5千万円の費用がかかると試算されたため、撤去を見送り、新たな集客施設として“第2の人生”を踏み出す方向性を打ち出した。
 民間を対象に、8月にも活用策のアイデアと運営事業者の募集を始め、今年度中に事業者を決定する方針。閉館時期は、25年度に新たな委託料が発生するのを避けるため、24年度末とする案が浮上している。
 港湾局の担当者は「南港地区の活性化という観点で、にぎわいづくりに貢献してくれる事業者に施設を活用してもらいたい」としているが、厳しい経済状況が続く中で、事業参入に名乗りを上げる事業者が現れない可能性も残っている。

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